賃貸フローリングが傷だらけ!床の傷は火災保険で請求できる?

アパートなどの賃貸物件でフローリングを傷つけてしまった場合、火災保険で補償してもらえるのでしょうか。生活するうえで床に物を落としてしまったり、家具を移動させた拍子にフローリングを傷つけてしまうことは仕方のないことです。ひどい傷の場合、退去時に修理費用を請求されるのではないかと心配になりますよね。

この記事では、傷つけてしまったフローリングを火災保険で修理することができるかについて詳しく解説します。

目次

賃貸フローリングの傷は火災保険の補償対象なのか

賃貸物件の床(フローリング)の傷は、火災保険の対象になる場合があります。

しかし、対象になるためにはいくつか条件があります。

賃貸フローリングが火災保険で適用されるための前提条件

賃貸物件のフローリングを火災保険金で補償してもらうための前提条件は、以下のとおりです。

「借家人賠償責任補償」や「修理費用補償」に加入していること

賃貸物件の「建物」に対して補償を受けるには、「借家人賠償責任補償」や「修理費用補償」などの特約を火災保険に付帯していることが前提となります。

基本的に、賃貸物件に対する火災保険は「建物」と「家財」で契約するべき人が異なります。

「建物」・・・建物の所有者は賃貸物件のオーナーであるため、オーナーが火災保険を契約する。建物に被害があった場合は、オーナーが契約する火災保険で対応する。

「家財」・・・部屋の中の家財は居住者の所有物なので、家財保険は居住者が契約する。家財に被害があった場合は、居住者の家財保険で対応する。

※どちらも一般的な場合です。事故の原因によって対応が異なるケースもあります。

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上記のとおり、居住者は部屋の中の家財に対して火災保険をかけるため、建物の損害については貸主の火災保険で対応します。しかし、居住者に過失があったり、賃貸借契約によって居住者が修理すると定められた部分については居住者の火災保険の「特約」で対応できる可能性があります。

「借家人賠償責任補償」とは

火災保険に付帯することができる特約で、被保険者が偶然な事故によって賃貸物件を損壊し、貸主(オーナー)に対して法律上の損害賠償責任を負担することになった場合に補償される特約です。

具体的に挙げると、借りている部屋で水濡れを発生させて建物を損壊してしまい、大家さんから損害賠償請求を受けた場合などが該当します。

賠償請求を受けた場合、かなり高額な支払いを強いられることもありますので、賃貸物件の火災保険を契約する際は「借家人賠償責任」を付帯するようにしましょう。

「借家人賠償責任補償」の適用範囲

借家人賠償責任補償で補償される範囲は、保険会社によって異なります。

ある保険会社では、「偶然な事故」による損害賠償責任が発生した場合を適用範囲としています。
【具体例】
・賃貸契約した部屋を退去する際に原状回復義務を余儀なくされ、壊してしまった壁を元通りに修復する費用を負担することになった。
・壁掛けテレビを床に落としてしまい、フローリングに穴があいてしまい修理が必要になった。

上記の適用範囲を条件としている保険会社であれば、偶然な事故によるフローリングの傷は「借家人賠償責任補償」でカバーできる可能性があります。
参考:損保ジャパン

一方で、保険会社によっては適用範囲を以下の2つに限っている場合があります。
1.火災・破裂・爆発
2.水濡れ

【具体例】
・タバコの火でボヤを出してしまい、壁や床を焦がしてしまった。
・暖房器具の火を消し忘れて火災が発生し、フローリングや壁紙を焼損させてしまった。
・洗濯機から水が溢れ、フローリングを水浸しにしてしまった。
参考:日新火災

上記の適用範囲を条件としている保険会社の場合は、火災や水濡れによるフローリングの損傷のみ補償されることになります。

以上のように、破損の原因によってフローリングの傷を火災保険で補償できるかどうかが変わってきます。
また、保険会社によっても補償が異なるため、事前に保険会社へ相談しましょう。

「修理費用補償」とは

「修理費用補償」とは、オーナー(大家さん)への損害賠償責任はなくとも、賃貸借契約に基づいて負担した修理費用を補償する特約です。

「借家人賠償責任補償」との違いは、オーナーへの損害賠償責任がない場合の修理費用が対象になる点です。損害賠償責任が発生する場合の補償は「借家人賠償責任補償」での対応となります。

【具体例】
・泥棒に破壊されたドアの鍵を、オーナーとの賃貸借契約に基づいて自己負担で応急修理した。
・道路から石が飛んできて窓ガラスが割れてしまい、賃貸借契約に基づいて自己負担で修理を行った。

具体例のように、居住者に故意や過失がないような損害には賠償責任が発生しないケースが多いです。また、自然災害のような「不可抗力」による被害も損害賠償責任を負わないケースがほとんどです。
このように、居住者に賠償責任が発生しない場合は「修理費用補償」で対応されます。

参考:損保ジャパン

「修理費用補償」の適用範囲

修理費用補償の適用範囲は、保険会社によって異なります。ご契約の保険会社へ確認してください。

一般的な適用範囲は以下のとおりです。

1.火災、落雷、破裂、爆発
2.風災、雹災、雪災
3.物体の落下、飛来、衝突など
4.水濡れ
5.盗難
6.騒擾、集団行為に伴う破壊行為
※借家人賠償責任補償で保険金を支払う事故も対象外です。

上記の原因によってフローリングが傷付き、借家人賠償責任補償の対象にならない場合、床の修理代は修理費用補償の対象になる可能性があります。

借家人賠償責任補償だけではカバーできない事故があるため、修理費用補償特約を併せて付帯することをおすすめします。

適用条件が保険会社によって異なる

繰り返しになってしまいますが、補償の適用条件は保険会社ごとに異なります。

ご自身が契約している補償内容について、保険会社に確認・相談することが最も重要です。

保険金を支払うかどうかの判断は、契約中の保険会社が決めることです。
インターネット上の記事を鵜呑みにせず、事故があった場合は保険会社へ速やかに連絡しましょう。

参考:日新火災

賃貸フローリングが火災保険で適用になる条件(ネット情報と実情の比較)

インターネット上では、賃貸フローリングの傷が火災保険で補償されるような記事がいくつも出回っています。正しい情報と誤った情報が混在しているため、注意して情報の取捨選択をしてください。

ここからは、火災保険でフローリングの傷を修理できるとされているネット情報と実情を比較して説明していきます。

突発的な事故

インターネットで「火災保険 賃貸フローリング」と検索してみてください。
上位記事で紹介されているのが「不測かつ突発的な事故であれば補償される」という内容です。

賃貸フローリングの傷やへこみが火災保険で適用になる条件

  1. 不測かつ突発的な事故
  2. 故意的でない
  3. 原因や発生日が明確に分かっている
  4. 火災保険の補償対象が「建物」となっていること
  5. 「汚損・破損」の特約を付けていること
https://kasaihokennsinnsa.com/flooring-scratches/

上記の記事では、賃貸物件ではなく所有物件(購入した自宅など)に該当する内容であり、賃貸物件の住人が契約する火災保険では対応できない内容となっています。

火災保険は、自分が所有しているものに対して補償をかけることが一般的です。そのため、「建物」に対して火災保険を掛けるのは「持ち主(オーナー)」であり、賃貸物件の借り主(居住者)は「建物」に対して火災保険を掛けません。

そのため、補償内容に「不測かつ突発的な事故」の補償が付帯されていれば賃貸フローリングの修理費用を払ってもらえるという説明は不適切です。

参考:ソニー損保

火災保険の適用範囲が「建物」になっていること

1つ前の内容と重複する部分がありますが、「建物に保険をかけていることが前提である」という説明は不適切です。

賃貸物件の借り主は「建物」へ火災保険をかけません。誤解のないようご注意ください。

賃貸フローリングを火災保険で修理する時の注意点

故意に傷つけると補償対象外

契約者、被保険者、これらの法定代理人が故意に損壊した場合は補償対象外です。

あくまで保険は偶然な事故に対して補償するものなので、故意による損害は免責となります。

経年劣化によるものだと補償対象外

経年劣化による損壊は補償されません。

経年劣化による損壊は自然に起こりうる現象であるため、偶然な事故とはみなされません。

参考:損保ジャパン

賃貸フローリングの傷修理を火災保険で請求するための手順

ここからは、賃貸フローリングの修理を火災保険で請求する手順を説明します。
電話やインターネット、LINEなどで簡単に行うことができるため、誰でも安心して請求できます。

手順1:保険会社へ連絡

賃貸フローリングの傷を発見したら、すみやかに保険会社もしくは保険代理店へ連絡しましょう。

修理前に連絡すると請求がスムーズに進むため、修理をする前に報告しましょう。

手順2:必要書類を提出する

保険会社から請求に必要な書類の案内があるので、はやめに提出してください。


一般的な必要書類を紹介します。
1.保険金請求書
2.被害箇所の写真
3.修理見積書

保険金請求書は保険会社から送付される書類です。届き次第すみやかに記入して提出しましょう。
最近は、インターネット上で送信(提出)できる保険会社もあります。紙面で記入して郵送するよりも速く手続きが進むため積極的に活用しましょう。

手順3:損害状況の調査・審査

被害箇所の写真と修理見積書をもとに、保険会社が査定を行います。
確認事項や修理費が明らかに桁違いな場合など、保険会社から確認や調査が入ることがあります。

間違っても虚偽の申告はしないようにしてください。

手順4:保険金の支払い

保険会社による査定金額で了承すると、保険金が支払われます。

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【結論】賃貸フローリングの傷が火災保険で補償されるかどうかを保険会社に確認しましょう!

賃貸物件に限らず、生活をしていればフローリングに傷がつくことは仕方のないことです。不安に思い悩んでいる方は、すぐに火災保険の内容を確認してみましょう。保険会社へ相談することで解決することがあるかもしれません。

火災保険の補償内容は人それぞれです。迷っている場合は保険会社に確認してみてくださいね。

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この記事を書いた人

保険代理店に10年以上勤務。ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を取得し、保険のトータルコーディネートを行っています。現在は保険の仕事をしながら、ライターとして複数メディアで記事を執筆しています。得意分野は火災保険。現在も1日に1件以上の事故対応をしているため、知識・経験ともに自信があります。
現役の保険募集人として、みなさんにとってわかりやすく有益な情報をお届けします。

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