火災保険の見舞金とは?種類や請求する手順・メリットについても解説!

火災保険には見舞金という制度があり、種類もさまざまです。見舞金についてよくわかっていない人も多く、申請できていないケースも多いのではないでしょうか。

この記事では、火災保険の見舞金の概要や種類、申請するメリットや申請時の注意点や手順についても解説します。

目次

火災保険の見舞金とは

火災保険の見舞金は、災害や事故により建物や家財が損害を受けた際に、損害保険金に先駆けて支払われる一時金です。

見舞金は、実際に発生した損害に付随するさまざまな不測の事態を補償し、損害保険金とは異なり、損害の周辺に発生した費用をカバーします。

この見舞金は、損害保険金とは別に上乗せで支払われ、例えば火災により生じたホテル代などの費用を補填してくれます。ただし、支払われる金額は契約内容に応じて変動し、実際の費用の10~30%が見舞金として支払われることが多いです。

火災保険の見舞金の種類

火災保険の見舞金には、以下の種類があります。

  • 臨時費用保険金
  • 失火見舞費用保険金
  • 地震火災費用保険金
  • 残存物取片づけ費用保険金
  • 損害防止費用保険金
  • 水道管修理費用保険金

ここからは、各費用保険金について解説します。

臨時費用保険金

こちらは損害保険金とは別に支払われるお見舞金のような役割を果たす補償金です。

事故で損害保険金が支払われる際に、一時的な生活スペースの確保やその他の臨時的な支出に充てることができます。
臨時費用保険金の使用方法は特に指定がないため、契約者が自由に利用することができます。

火災で家が被害を受けた際の仮住まい費用の他に、修理時に資材をグレードアップさせるための費用に充てても問題はありません。また、保険料を抑えるために免責(自己負担額)を設定した場合、臨時費用保険金で免責分を補えるケースも多くあります。

通常、この保険金は事故1回あたりに支払われ、損害保険金の10%から30%が一般的です。限度額は100万円から300万円の範囲に設定されることが多いようです。

臨時費用保険金は自動付帯で補償を外すことができない場合がありますが、補償を外すことができる商品もあります。

参考:損保ジャパン

失火見舞費用保険金

失火見舞費用保険金とは、建物から発生した火災や爆発、破裂などが原因で、近隣の所有物に損害を与えてしまった場合の見舞金費用を補償する保険金です。

失火法という法律上、重過失がない場合は失火によって隣家へ損害を与えてしまった場合でも類焼損害賠償の必要がないとされています。しかし、普段から付き合いのあるご近所さんに対して申し訳ない気持ちに押しつぶされることは容易に想像できます。また、隣家が火災保険に未加入で保険金が不十分な場合もあります。

そのような場合に備えて、失火見舞費用保険金という特約が存在します。法的な賠償責任がない状況でも、良好な近隣関係を維持するための気配りは必要不可欠です。

参考:三井住友海上

地震火災費用保険金

地震火災費用保険金は、地震や噴火、またはこれらが原因で発生した津波によって引き起こされた火災によって損害を受けた建物に支払われる保険金です。

ただし、損害が認定されるには特定の条件があり、建物が半焼以上の場合か、家財が全焼した場合に限られます。半焼以上の定義は、主要構造部の火災による損害が建物保険金額の20%以上であるか、焼失した部分の床面積が建物全体の延べ床面積の20%以上となった場合を指します。

参考:損保ジャパン

残存物取片づけ費用保険金

こちらは、事故が起こり損害保険金が支払われる際に、建物の残存物を取り片付けるのに必要な費用において支払われる保険金です。

残存物の片付けには、台風や盗難などの災害により発生した損傷部分の処分が含まれます。これには屋根や外壁の残骸の処理、窃盗に遭った場合の散乱した破片の処分、または火災で焼け残った家財の廃棄物処理が含まれます。建物の取り壊しも範疇に含まれ、これらの作業にかかる費用をカバーします。

参考:損保ジャパン

損害防止費用保険金

破裂・火災・爆発・落雷などの事故に関して、損害の拡大を防ぐために発生した費用に対して支払われる保険金です。

損害の拡大を防ぐために負担した費用には、消火活動に使用した消火薬剤(消火器)などの再取得費用、消火活動によって損壊した物の修理費用、緊急招集された人員や器材に関わる費用などが含まれます。保険金は主に消火活動に関連する事由が対象であり、人身事故や損害賠償、謝礼などに関連する費用には支払われません。

参考:ソニー損保

水道管修理費用保険金

こちらは、水道管が凍結で損壊し、修理した場合に支払われる保険金のことです。

寒冷地域や雪の多い地域では、冬場に水道管内の水が凍り水道管が凍結することがあります。水道管が凍結すると、一時的に排水ができなくなったり、水道管が破裂するトラブルが起こる可能性があります。

北国や山間部などでは頻発しやすく、そのリスクに備えるために水道管修理費用保険金に加入することがおすすめです。

参考:ソニー損保

火災保険の見舞金をもらえるケース

次に、実際に火災保険で見舞金をもらえるケースについて、補償種類別に詳しく解説します。

火災の場合

火災の被害に遭った場合で、損害保険金の支払対象になった場合は、いくつかの見舞金が支払われる可能性が考えられます。

例えば、自宅での火災がタバコの不始末によるもので消火器で鎮火し、家財や床、天井に損害が生じた場合で考えてみましょう。この場合は、火災被害にあった建物の損害額にプラスして「臨時費用保険金」と「損害防止費用保険金」が支払われることがあります。ただし、重過失が認められる場合は補償対象外となる可能性もありますので注意が必要です。

保険金計算の例として、建物と家財の損害が合わせて200万円で、見舞金としては損害保険金の10%にあたる20万円が支払われます。また、消火器の再購入費用が10万円かかった場合、これが損害防止費用として実費で補償されます。最終的にはこれらを合算して、総額230万円が保険金として受け取れます。

臨時費用保険金を10%で契約している場合で計算しました。補償内容は各社異なるためご自身のご契約をご確認ください。

台風の場合

台風による被害を受けた場合にも、見舞金が支払われることが考えられます。

具体的な被害としては、台風の強風によって屋根の瓦や雨樋が破損することが多々あります。
この場合に支払われる可能性がある見舞金は、「臨時費用保険金」と「残存物取り片付け費用保険金」です。

保険金の計算例として、建物(床)の損害が100万円とします。臨時費用保険金として損害保険金の10%にあたる10万円、加えて残存物を片付けるのにかかった実際の費用が支払われることが考えられます。

水漏れの場合

水濡れ被害とは、給排水管などが偶然な事故により破損して水が漏れた場合などに起こる事故をいいます。

水濡れ被害の場合は、水濡れによって被害を受けた建物や家財に対する修理費用への保険金支払いは可能ですが、給排水設備自体への支払いはないため注意が必要です。

この場合に支払われる見舞金として考えられるのは、「臨時費用保険金」です。
水道管の凍結による被害の場合は、「水道管修理費用保険金」も支払われることがあります。

参考:損保ジャパン

地震の場合

地震被害に遭った場合、保険金の支払いには以下の見舞金(費用保険金)の支払いが考えられます。

例えば、料理中に大型地震が発生し、自宅で火災が発生した場合で考えてみましょう。
火災保険に地震保険を付帯していない場合、火災保険からの損害補償は適用されません。しかし、見舞金として「地震火災費用保険金」や「損害防止費用」が支払われる可能性があります。

具体的な保険金の計算例として、火災保険からの損害補償がない中で、地震火災費用保険金は火災保険金額の5%、損害防止費用は実費の支払いが考えられます。例えば、火災保険金額が800万円であれば、地震火災費用保険金は40万円、損害防止費用は実費の10万円がそれぞれ受け取れることになります。

火災保険の見舞金を請求するメリット

見舞金の利点は二つあります。

まず、通常の損害保険金の上限を超えない範囲で、見舞金を特約として付帯させることで、受け取れる保険金総額が単純に10~30%増加します。火災保険の損害保険金には算出方法が規定されており、その上限を超える金額は支給されませんが、見舞金を組み合わせることで、より多くの補償を得ることが可能です。

次に、一時金としての見舞金は、災害発生直後の精神的なダメージが大きい時期に、生活の再建に役立ちます。災害後の不安定な状況で、まとまった貯金がない場合、損害補償が実際に受けられるまでの期間が課題となります。見舞金はそのような状況での安心感を提供し、生活を立て直す助けとなります。

火災保険の見舞金を請求する際の注意点

見舞金(費用保険金)が支払われない場合も存在します。

この種の補償は、損害保険金が支払われる際に同時に支払われるケースと、独立して支払われるケースがあります。臨時費用保険金や失火見舞費用保険金、残存物取り片費用保険金、損害防止費用保険金などは、原則として損害保険金が支払われる際に損害保険金とは別に支払われる補償です。つまり、これらは単体での請求ができず、損害保険金が支払われない場合には受け取ることができません。

また、損害保険金が支払われない条件にも注意が必要です。
経年劣化による損害や、契約者(家族を含む場合あり)の故意または過失による損害、法令違反による損害などがこれに当たります。保険対象外となる例として、開いたドアや閉め切っていない窓の隙間からの雨濡れが挙げられますが、飛来物により屋根や外壁が損傷し、雨が侵入した場合は補償の対象となります。

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火災保険の見舞金を請求する手順

最後に、保険金の請求手順について、5つのステップで説明します。

1.保険会社への連絡

損害が発生したら、迅速に保険会社または代理店に連絡します。電話やWEBを通じて連絡できますが、早期の連絡が重要です。ただし、焦って連絡することで申告漏れの原因になる可能性もあるため、冷静な対応が必要です。修繕費用の見積もりが必要な場合は、連絡時に修繕業者に見積もりを依頼することもあります。

2.必要書類の準備

事故の原因により必要な書類が異なりますが、代表的なものには、保険金請求書、修理見積書、被害状況の写真、事故内容報告書、損害明細書、罹災証明書などがあります。これらの書類は、保険会社へ送付する際に提出します。

3.必要書類を保険会社に送付

準備した書類を保険会社に送付します。提出方法は、郵送のほかに Webサイトへのアップロードやメールなどがあります。交通網がストップしている場合や大災害時には、保険会社に提出方法を確認して対応しましょう。

4.保険会社が審査・調査を行い支払いの可否を判断

保険会社は損害保険登録鑑定人を通じて審査と調査を行います。写真だけで判断できる場合は写真と修理見積書によって査定を行いますが、難解な場合には鑑定人が直接損害状況を調査することもあります。

5.保険金が支払われる

保険会社の審査が完了し、指定の口座に保険金が振り込まれます。保険金は免責額(自己負担額)を差し引いた金額で支給されます。免責額が少ないほど受け取る保険金の総額が増えることになります。

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まとめ

火災保険の見舞金は、申請することで、通常の保険金よりも多くの金額を受け取ることができる特約です。さまざまな種類がありますが、該当するものは正しく申請することで、確実に受け取れる金額を増やせるので、内容を理解してしっかりと申請しましょう。

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この記事を書いた人

保険代理店に10年以上勤務。ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を取得し、保険のトータルコーディネートを行っています。現在は保険の仕事をしながら、ライターとして複数メディアで記事を執筆しています。得意分野は火災保険。現在も1日に1件以上の事故対応をしているため、知識・経験ともに自信があります。
現役の保険募集人として、みなさんにとってわかりやすく有益な情報をお届けします。

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