火災保険は二重加入してもいいの?二重加入するとお得になるのか

火災保険は、火災によって発生した損害を補償するための保険であり、多くの人が加入しています。しかし、同じリスクに対して複数の保険に加入することで、二重加入という状態が生じることがあります。本記事では、火災保険の二重加入について、その問題点や回避するための注意点、補償範囲について解説します。

目次

火災保険に二重加入するとどんな問題が起こるのか?

火災保険に二重加入してしまうと、さまざまな問題が発生します。
ここからは、二重加入の説明や二重加入した場合の保険金請求時に生じる問題について詳しく説明します。

二重加入とはどういう状態か?

二重加入とは、同じリスクに対して複数の保険契約を結んでしまうことを指し、重複契約とよばれることもあります。同じ対象物(建物や家財など)に対して、2つ以上の火災保険に加入している状態ですが、故意に複数契約している場合と、知らずに二重加入している場合があります。

【故意で複数契約しているケース】
A社とB社の2社に付き合いがあり、3,000万円の建物に対してA社で1,500万円、B社で1,500万円を契約し、合計で保険金額を3,000万円としている場合など。

【知らずに二重加入している場合】
建物の所有者である祖父が火災保険に加入していたが、祖父は認知症で施設で暮らすようになった。祖父が火災保険に加入していることを知らなかった息子が、息子名義で火災保険に二重加入してしまった。

このように、故意で二重加入している場合と、知らない間に二重加入してしまった場合があります。
ご家族で話し合い、火災保険の加入状況をしっかりと確認するようにしましょう。

二重加入した場合の保険金請求の問題点は?

二重加入した場合、保険金の請求に関して問題が発生することがあります。

二重加入した建物が火災に遭った場合、どちらの保険会社からも保険金が支払われると勘違いしている方が多くいます。しかし、保険金は対象物の協定再調達価額(新価実損払いの場合)を限度に支払われます。

協定再調達価額とは、保険の対象と同じものを再築や再取得するのにかかる金額を基準として、保険契約者に同意のもと保険証券に記載した額をいいます。
例えば、建物3,000万円の自宅に火災保険を6,000万円(A社:3,000万円、B社:3,000万円)かけて全焼した場合、保険金は3,000万円しか支払われません。そのため、残りの3,000万円は無駄な補償になります。

新価での支払いではなく、時価で支払う契約になっている場合は、さらに支払い保険金額が減額される可能性があります。

時価とは、新築時から使用による消耗および経過年数に応じた減価額を控除した金額のことをいいます。
(※自動車保険の車両保険は時価額で評価されることが一般的ですが、火災保険は新価で設定していることが多いです。しかし、古い火災保険の契約は時価になっていることがあるためご注意ください。)

参考:損保ジャパン

二重加入した場合の返金・解約について

二重加入した場合の返金や解約については、状況や保険会社によって異なります。

基本的には、無駄に契約していた方を解約することになり、契約内容によって解約返戻金が発生することがあります。

契約者に非がある二重加入の場合、保険始期日に遡って保険料全額を返還することは難しいため、申し出があった日から保険の満期日までの分を返金することが多いです。

無駄な保険料を払い続けることを防ぐためにも、二重加入している場合は1つの保険契約にまとめることをおすすめします。

火災保険の補償範囲をしっかり理解しましょう

火災保険を契約する際には、その補償される範囲を理解することが重要です。火災保険は、火災などの被害を補償する保険ですが、具体的にどのような被害が補償されるかを知ることで保険の有効性を高めることができます。

火災保険が補償する対象物とは?

火災保険が補償する対象物とは、契約時に対象物として設定したものです。
一般的な専用住宅では「建物・家財」を対象物として設定します。併用住宅(自宅兼店舗など)では、建物と家財に加えて設備什器や商品製品を対象とすることがあります。

契約した対象物は、ご自身の保険証券に記載されているので、しっかりと確認してください。

火災保険の補償範囲には何が含まれる?

火災保険の補償範囲には、火災による被害の他に、風災や水災、水濡れ、盗難、不測かつ突発的な事故などが含まれます。また、被害によっては、建物の修繕費用や仮住まい費用、盗難や賠償責任に関する補償など、様々な補償があります。

詳しくは下記の記事で紹介しています。参考にしてください。

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火災保険で補償されないものとは?

一方、火災保険で補償されないものには、建物の老朽化による経年劣化の被害や故意または過失による被害などがあります。

地震による被害や地震が原因で発生した津波による被害は「地震保険」を付帯していなければ補償されないため注意が必要です。

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火災保険に二重加入するメリットはあるのか?

火災保険に二重加入することで得られるメリットはあるのでしょうか。ここからは、火災保険を重複して加入する場合のメリットとデメリットについて説明します。

二重加入で得られるメリットとは?

二重加入によるメリットは、基本的にありません。保険料を2倍支払っているだけで、補償が増えるわけではないため、無駄な出費となっていることがほとんどです。

無駄な保険料を支払うことで保険に対する予算が減り、その他の魅力的な特約(オプションの補償)を付帯できなくなっている可能性もあります。

二重加入のデメリットとは?

二重加入によるデメリットは、保険料の二重支払い以外にも、契約書類の整理や保険金請求時の手続きの複雑化などが挙げられます。

二重保険になっている場合には、どちらの保険会社から請求するか迷うことがあり、補償を受けるまでの手続きが複雑化する可能性があります。また、不正請求を行った場合には、法的責任を問われることがあります。

また、保険金請求時に、一方の保険会社からしか補償が得られないとわかったときの精神的ショックも大きいと予想されます。

二重加入の状態を回避するために知っておきたい注意点

二重加入を避けるためには、注意が必要です。自動更新される契約、保険証券の確認と保管、そして保険会社や代理店の営業電話に対する注意などが必要です。ここからは、二重加入を回避するための注意点を3つ紹介します。

自動更新される契約に気を付ける

火災保険には、契約によって自動更新される契約があります。これは継続手続きを失念した場合の無保険状態を回避するために、契約者救済措置としてあるものです。しかし、自動で更新されていることに気が付かず、他の保険会社で重複して保険を契約をしてしまう場合があります。

満期前に契約をしっかりと確認し、更新をしない場合は保険会社や代理店に更新しない旨を伝えてください。

参考:東京海上日動

保険証券の確認と保管に注意する

保険証券の確認と保管に注意しましょう。保険証券には、保険金請求時に必要な情報が記載されています。内容を確認のうえ、どの物件に対する保険なのかを把握しておきましょう。

また、保険証券の保管場所を決めておくことも大切です。
保険証券ファイルを作成するなどして管理をすることによって、保険証券の紛失を防ぐことや二重加入の防止に繋がります。

保険会社や代理店の営業電話に要注意

保険会社や代理店の営業電話にも要注意です。営業電話で勧誘された場合は、既に火災保険を契約しているかどうかを確認しましょう。すでにほかの家族が契約している可能性があるため、現在加入中の保険があるか確認してください。

保険会社や代理店の営業電話を受けた場合は、急かされずにゆっくりと考え、契約する前に必ず契約内容を確認しましょう。

既に二重加入してしまった場合の対処法

もしも既に二重加入してしまった場合は、早急に対処することが重要です。まずは両方の保険会社に連絡し、状況を説明して二重加入を解消する手続きを取ります。

保険会社への申告方法と注意事項

二重加入を解消するためには、保険会社や代理店に申告する必要があります。

二重加入してしまった複数の契約を、代理店や保険会社の担当者に確認してもらうと間違いありません。

1つの契約に絞っても問題ないことが確認できたら、そのほかの不要な契約の解約手続きにすすみます。

自分で判断せず、保険のプロに確認してもらうとよいでしょう。

解約手続きや払い戻しについて

二重加入していた保険のうち、解約することになった保険については解約手続きを行う必要があります。解約時期や方法によっては解約返戻金が受け取れる場合もあるため、保険会社に確認しましょう。ただし、解約による損失を最小限に抑えるためにも、保険の専門家にアドバイスを仰ぐことが賢明です。

解約手続きの方法は保険会社によって様々ですが、一般的にはカスタマーセンターや代理店に電話をします。その後、解約をするための変更依頼書に署名をして解約手続き完了となります。

保険料を一括払や年払で支払っている場合は返戻金が発生する可能性があります。月払で支払っている場合は返戻金がないことが多いです。

保険のプロに相談しよう

火災保険の契約や二重加入の問題については、保険のプロフェッショナルに相談することが賢明です。保険の専門家は豊富な知識と経験を持っており、最適な保険プランを提案してくれます。

保険の専門家に相談するメリットと活用方法

保険の専門家に相談する主なメリットは、自分に最適な保険プランを見つけることができる点です。保険の種類や補償内容、保険料などについての疑問や不安を相談することで、適切な情報を得ることができます。専門家のアドバイスを活用することで、より理解が深まり、満足度の高い保険契約ができるでしょう。

また、専門家に確認してもらうことは、二重加入の防止にもなります。

最近はネットで加入できる手軽で安価な保険が流通しています。ご自身で管理できる場合は問題ありませんが、知識のない方は専門家に相談してはいかがでしょうか。

適切な保険プランを選ぶためのポイント

適切な保険プランを選ぶ際には、まず自分の保険ニーズを明確にしましょう。
補償したいリスクや予算、将来のライフプランなどを考慮して、最適な保険内容を検討します。
また、保険料の支払いについても無理のない範囲で計画することが大切です。

保険の見直しのタイミングとコツ

保険の見直しは、ライフイベントが発生した際や保険内容に変更があった際に行うことが一般的です。結婚、出産、転居、収入の変化などの重要なイベントがあれば、保険の見直しのタイミングとして適しています。また、定期的な見直しを行うことで、常に最適な保険に加入し続けることができます。

まとめ

火災保険は、火災による損害を補償するための重要な保険ですが、二重加入によって保険金の請求や解約、返金に問題が生じることがあります。二重加入を回避するためには、保険の内容や金額を比較し、更新時期や解約手数料を確認することが必要です。また、保険証券の確認と保管、営業電話に注意することも大切です。さらに、火災保険の補償範囲について理解しておくことで、適切な保険選びができます。二重加入によるトラブルを避けるために、この記事の内容を参考に適切な火災保険の選択を行いましょう。

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この記事を書いた人

保険代理店に10年以上勤務。ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を取得し、保険のトータルコーディネートを行っています。現在は保険の仕事をしながら、ライターとして複数メディアで記事を執筆しています。得意分野は火災保険。現在も1日に1件以上の事故対応をしているため、知識・経験ともに自信があります。
現役の保険募集人として、みなさんにとってわかりやすく有益な情報をお届けします。

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