大切な家や財産を守るために、多くの人が火災保険へ加入していること思います。火災保険では、被災した場合に損害部分を補填するための費用「給付金」を請求することができます。
実際に請求したらどのくらいの給付金がいつもらえるのか?に関しては誰もが気になる点でしょう。
そこで本記事では、そもそも給付金とは何なのか?といった基本情報から、受け取りまでの期間や損害箇所別の給付金相場など、給付金に関しての疑問を徹底解説します。
火災保険の給付金とは?
火災保険の給付金とは、建物や家財に受けた損害とその損害に伴って発生するさまざまな費用を補填するために、損害保険会社から受け取る保険金のこと。
給付金には、損害保険金と費用保険金と呼ばれる2つの給付金があります。
損害保険金
火災保険の対象である建物と家財に発生した損害金額に対して支払われる保険金のことで、いわゆる損害保険でメインの給付金となります。
費用保険金
費用保険金とは、建物や家財の直接的な損害のほかに発生するさまざまな諸費用をサポートするために損害保険金額にプラスして支払われる保険金のことで、保険会社によっては「臨時費用保険金」と呼ばれる場合もあります。
費用保険金の種類には、火災保険が起こった際に第三者へ支払われるものや、復旧までにかかる臨時費用を補填など、さまざまな補償内容があります。
【費用保険金の種類】
費用保険金 | 補償内容 |
事故時諸費用保険金 | 事故や損害に伴い必要となる臨時費用を補填する保険金 |
失火見舞費用保険金 | 火災、破裂・爆発によって近隣等の第三者の所有物に損害を生じた場合、第三者へ支払われる保険金 |
残存物取片づけ費用保険金 | 損害時の残存物のとり片づけに必要な費用を補填するための保険金 |
仮修理費用保険金 | 損害が発生した際に、復旧のために緊急的に負担したかり修理費用や仮住まい費用に対して支払う保険金 |
修理付帯費用保険金 | 損害生じた場合、復旧のために必要な損害原因の調査費用や点検費用等 |
損害範囲確定費用 | 修理に際して損害を確定するための必要な調査費用 |
給付金はどんな場合にもらえる?
保険対象の建物もしくは家財が特定の損害を受けた際に、保険会社へ申請し、損害が承認された場合に給付金が支払われます。
給付金をもらえるのは、契約している補償範囲内であることの他にも、損害発生から3年以内、経年劣化が原因ではない、故意の事故でない、などといった条件が揃う必要があります。
保険申請から給付金がもらえるまでの期間
消費者が迅速に給付金を受け取れるよう、保険法によって支払い期限を、原則として請求完了日からその日を含めて30日以内であることと定めています。
給付金を支払う際、損害保険会社は保険金支払いが正当であるかどうかを判断するために調査を行いますが、保険法ではこの調査の合理的な期間のことを「相当の期間」と規定し、支払い期間について以下のように定めています。
(保険給付の履行期)
第二十一条 保険給付を行う期限を定めた場合であっても、当該期限が、保険事故、てん補損害額、保険者が免責される事由その他の保険給付を行うために確認をすることが損害保険契約上必要とされる事項の確認をするための相当の期間を経過する日後の日であるときは、当該期間を経過する日をもって保険給付を行う期限とする。
保険法
保険申請から30日以上経過する場合は延滞金をもらえる
調査が遅れるなど保険会社側の事情により、請求完了日から30日を経過しても保険金が給付されない場合、支払いまでの期間につき遅延損害金が保険金に上乗せして支払われます。
ただし、給付までに1ヶ月以上が例外もある
保険法第二十一条では、損害調査に1ヶ月以上かかる正当な理由があり、延長が不可欠な場合と、契約者が調査を妨げた場合、保険会社は支払い期間を延長することができ、遅滞の責任を負わない旨が定められています。
(保険給付の履行期)
第二十一条
2 保険給付を行う期限を定めなかったときは、保険者は、保険給付の請求があった後、当該請求に係る保険事故及びてん補損害額の確認をするために必要な期間を経過するまでは、遅滞の責任を負わない。
3 保険者が前二項に規定する確認をするために必要な調査を行うに当たり、保険契約者又は被保険者が正当な理由なく当該調査を妨げ、又はこれに応じなかった場合には、保険者は、これにより保険給付を遅延した期間について、遅滞の責任を負わない。
保険法
正当な理由とは、事故や災害の内容が警察や専門機関による照会が必要であり、1ヶ月以上の時間を要している場合や、国外における調査を行なっている場合などが挙げられます。
具体的には、日本損害保険協会のホームページに以下の4つのケースが挙げられています。
【給付金支払い30日以上の延長が認められている例】
1.警察・検察・消防等の機関による捜査・調査結果の照会を行う場合
2.専門機関による鑑定等の結果の照会を行う場合
3.災害救助法が適用された災害の被災地域において必要な調査を行う場合
4.日本国外における調査を行う場合
日本損害保険協会
保険申請にも期限がある
給付金の支払いは請求完了日を起算日として計算しますが、この請求日つまり保険申請日にも保険法で定められた公式な期限があるということを知っておきましょう。
第五章 雑則
(消滅時効)
第九十五条 保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第六十三条又は第九十二条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、これらを行使することができる時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。
保険法
保険申請は事故発生日から3年以内と定められており、3年を過ぎた損害内容に関しては時効を迎えるため、請求する権利がなくなります。
給付金額はどのくらいもらえる?
気になる給付金の金額ですが、もらえる金額は一律ではなく、損害の程度や火災保険の保険金をいくらに設定しているかなど、契約内容によって異なります。
火災保険では、所有している財産が損害を受けた分の補填するための保険でしたので基本的には
「損害を受けた金額=損害保険金額」
となり、さらに特約に加入している場合には、損害保険金額に費用保険金額をプラスした
「損害保険金+費用保険金=給付金額」
が最終的にもらえる給付金額になると考えておきましょう。
建物が全壊した場合の給付金
火災保険等により、建物が全壊した際には、契約時に設定した保険金額満額が給付金額として受け取ることができます。
ただし、火災保険で満額もしくは80%以上の給付金を受け取った時点で火災保険契約は終了します。
損害箇所別|給付金相場をご紹介
これまでの保険申請の事例から実際にもらえた給付金相場を損害箇所別にご紹介します。
屋根全般:135万円
外壁:72万円
フェンス・壁:32万円
カーポート:60万円
雨漏り・水濡れ:114万円
給湯器・室外機:10万円
給付金に関する知っておきたい3つのこと
ここでは、実際に給付金を請求する際や受け取った際に、前もって知っておきたい知識をお伝えします。
1.経年劣化が原因であれば給付金はもらえない
火災保険で給付金がもらえるかどうかは、損害原因が大きく影響します。
損害原因が特定できず、年数と共に劣化したいわゆる「経年劣化」と保険会社にみなされた場合は、給付金は支払割れないということを知っておきましょう。
2.もらった給付金に対する税金は支払わなくて良い
被害が大きければ、もらえる給付金額も大きくなります。しかし、火災保険で受け取るお金は原則として非課税です。
火災保険の考えとして、給付金は元々持っていた財産が受けた損害分を補填するものであり、財産が増えるわけではありません。そのため、たとえ、1000万円の給付金をもらったとしても翌年の税金を支払う必要はありません。
保険と税
損害保険金を受け取る場合も、保険料の負担者や支払原因によって課税関係が異なってきますが、保険を掛けていた方が建物の焼失や身体の傷害・疾病を原因として受け取る保険金には、原則として課税されません。
国税庁
3.給付金の使い道は決まっていない
実は、火災保険でもらった給付金の使い道に決まりはありません。
見積書を提出してもらった給付金なので、修理に使用しなければいけないのでは?と思う人も多いですが、損害保険会社は給付金を受け取った後の制限を設けていません。
まとめ
火災保険の給付金は、メインとなる損害保険金と特約としてプラスする費用保険金の2つから成り、災害時にもらえる給付金額は「損害保険金(メインの補償)+費用保険金(特約補償)」です。
しかし、どこまでが損害なのか、はたまた被害金額はいくらなのかは自分ではなかなか判断できないものでもありますので、確実に給付金をもらいたい方や支給金額を上げたい方はぜひ、当社にご相談ください。