部屋を契約する際の賃貸契約では、火災保険への加入が必須条件となっていることがほとんどです。この場合の火災保険とは自分の財産である家電製品や家具などへの補償「家財保険」のことを指します。
しかし、自分の家財を守るための保険が、なぜ賃貸物件において不動産契約の必須条件なのか?と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。
本記事では、家財保険の補償内容や範囲から保険金額の決め方まで、知っておきたい家財保険のに基礎知識ついてまとめています。家財保険について正しく知れば、なぜ賃貸契約に必須の保険なのかが分かります!
さらに、実際の支払い事例もご紹介しますので家財保険について気になっている方は、参考になる内容ですのでぜひ最後までご覧ください。
火災保険は「建物」と「家財」の二つがある
火災保険に加入する際には「どこを補償したいのか?」損害が起きた場合に補償する対象を決める必要があり、その補償対象には「建物」と「家財」の二つがあります。
それぞれ建物保険、家財保険と呼ばれ、同じ火災保険でも補償する対象が異なります。まずは、それ ぞれの内容について簡単にご説明します。
建物保険とは
建物の保険とは、個人が所有する住宅または企業が所有する建物自体やその中に設置されている持ち運びできない動産物に対して生じた損害を補償する保険のことをいいます。
【建物保険で補償できる主なもの】
補償対象 | |
建物自体 | 建物の土台を含む基礎、外壁、屋根、門、塀、床、畳、ふすま、扉、窓、網戸、雨戸、 窓ガラス・サッシ、内壁、クロス等 |
付属設備物 | エアコン、室外機、シーリングライト、給湯器、風呂釜、流し台、キッチン、備え付けキャビネット、吊り戸棚、レンジフード、換気扇、浴槽、洗面化粧台、温水・暖房便座等 |
上記以外でも建物に付属していて動かすことのできない設備品は、基本的に建物の保険で補償されます。
家財保険とは
家財の保険とは、契約者とその世帯が所有する家具、衣類、家電、その他、持ち運び可能な動産物に生じた損害を補償する保険のことを指します。
【家財保険で補償できる主なもの】
補償対象 | |
家具 | タンス、チェスト、机、ソファー、カーテン、カーペット、食器類、陶器、ベッド、寝具、 テレビ台、ピアノ等楽器 |
家電 | テレビ、洗濯機、掃除機、パソコン(デスクトップ・ノートブック)、プリンター、電話機、 冷蔵庫等のキッチン家電、ブルーレイ、カメラ、ヒーター、冷暖房機器、ゲーム機器 |
身回品 | 衣類、靴、カバン、時計、アクセサリー |
その他 | レジャー用品、自転車、125cc以下の原付(建物内に収容されている場合に限る) |
家財の保険では、日常生活で上で必要なもの全般を補償することができます。
家財保険の補償内容について
基本的に家財保険の補償内容は、建物の保険と同じです。
日常で起こりうるさまざまなリスク「火災、水災、風災、雪災、落雷、盗難、汚損・破損、水濡れ、破裂・爆発」等の中から、契約時に選択したものが家財保険の補償内容になります。
*自然災害の中でも地震による災害は補償対象外です。地震を補償に含めたい場合は、「地震保険」への加入が必要になることを覚えておきましょう。
賃貸契約で「家財保険」の加入が必須?
一般的に不動産会社や家主さんとの賃貸契約において、火災保険の加入が必須となっています。
なぜ個人の財産を補償する家財保険が、賃貸契約の必須条件となっているのか?と疑問に思いますよね。
その答えは、家財保険で他人の財産を賠償する保険「借家人賠償責任補償」に加入する必要があるからです。賃貸契約で重要な役割を担う借家人賠償責任についてご説明しましょう。
借家人賠償責任補償とは?
万が一、借りている部屋に損害・損傷を与えてしまった場合、借主は家主に対して法律上の損害賠償責任が発生します。
借家人賠償責任補償とは、借主の過失によって与えた損害賠償金を補償する保険のことをいいます。
家財保険に付帯できる特約で、いわばオプションのようなものですが、家主さんや不動産が必要としているのはこの借家人賠償責任補償です。
*借家人賠償責任補償は、単独で加入することができません。基本補償である家財保険に特約として付帯する必要があるため、賃貸契約時は家財保険の契約が必須となるのです。
家財保険の保険金額の決め方
賃貸契約時には、借家人賠償責任補償への加入は必須ですが、メインである家財保険の保険金額は自分で設定することができます。
当然、家財保険の保険金設定額が安いほど、保険料を安くすることができますが、安く設定しすぎると、実際の災害時に困ってしまうこととなります。
家財保険の保険金額は、低すぎず高すぎず適切であることが大切です。そこで、適切な保険金額の決め方について、ここでは2つの方法をご紹介します。
1.所有財産を積算して設定する
一つ目の方法は、所有する財産金額を自分で計算する「積算評価」方法です。
メリットとしては、自己財産を正確に知ることができるので、多すぎず少な過ぎず、適切な保険金額の家財保険を持つことができます。
一方で、デメリットとしては、一つ一つの価値を出して計算する必要があるので、手間がかかりますし、人数の多い家庭では不向きな方法といえるでしょう。
2.家財評価表から保険金額を決める
各保険会社は、契約者の年齢と家族構成から各集計した平均の保険金評価額データを持っています。ご自身の家財の財産総額が分からない場合は、保険会社の目安表を参考にするのがおすすめです。
家財評価額データから保険金額の目安を見てみましょう。
世帯人数 | 設定金額 |
独身 | 300万円 |
夫婦ふたり世帯 | 490〜1,550万円 |
3人家族(大人2人、子供1人) | 580〜1,640万円 |
4人家族(大人2人、子供2人) | 670〜1,730万円 |
5人家族(大人2人、子供3人) | 760〜1,820万円 |
この方法のメリットは、簡単に適正金額を決めることができる点です。デメリットは、あくまでも平均金額なので、ピッタリの金額ではないという点です。
しかし、損害保険会社が過去のデータから集計した評価額は、大きくズレてる可能性が低く、多くの方がこちらの方法を採用し、保険金額を決めています。
実際の家財保険による支払い事例をご紹介
家財保険の補償内容に関して理解はできても、日常生活においてどんな場合に補償されるのかイメージがわかない人も多いのではないでしょうか?
ここでは、家財保険によって実際に保険金がおりた事例をいくつかご紹介します。
支払い事例①:水災
- ゲリラ豪雨により、床下浸水で半分以上の家具家電が使えなくなった
支払い事例②:盗難
- 空き巣が入って、電化製品やアクセサリーが盗まれた。
- 空き巣が室内を荒らして、家具を壊した
支払い事例③:破損・汚損
- 室内で遊んでいた子供がボールを投げてテレビが壊れた
- パソコンにコーヒーをこぼしてしまい故障した
- 模様替えの最中、あやまって家具や家電を落下した
家財保険の注意点
家財保険に契約したからといって、家の中にあるものすべての財産物が補償されるというわけではありません。家財保険のパンフレットには必ず、別途申請が必要なものや補償対象外のものが明記されています。
以下では、家財保険に加入する際に注意すべき点をまとめています。
高価な所有物は申請が必要!明記物件について
家財の保険では、宝石等のアクセサリー、骨董品、絵画など、高額な物は「明記物件」と言われ、補償範囲に入っていません。これらを家財保険の補償に入れるには、契約時に申請が必要になるので注意が必要です。
日本損害保険協会のホームページでは明記物件は以下のように定義づけています。
貴金属・宝玉・宝石・書画・骨董(とう)・彫刻物その他の美術品のうち、1個または1組の価額が30万円を超えるものは、保険証券に明記されていなければ、補償の対象にならない場合があります。これを「明記物件」といいます。保険の対象にするには契約時に手続きを行うことが必要です。なお、契約時に明記しなくても(明記し忘れた場合でも)補償の対象とする商品もありますが、例えば、1個または1組の損害額が30万円を超える場合はその損害額を30万円とみなしたり、1回の事故につき限度額(合計100万円や300万円など)を設けたりしています。
日本損害保険協会
補償対象外の物を知っておこう
家財保険では、補償対象外のものが記載されており、一般的にどの保険会社でもある程度共通しています。
「保険が使えると思ったのに、補償対象だった。」なんてことにならないようにあらかじめ補償対象外のものを知っておきましょう。
保険の対象にならないもの
・通貨、有価証券、預貯金証書、印紙、切手、クレジットカード、プリペイドカード、電子マネー、プログラム、データ、その他これらに類するもの、自動車・125cc以上のバイク、
・家財が屋外にある間に生じた盗難
日本損害保険協会
家から持ち出している間の事故や盗難は補償されない
家財保険は、家の中で起こった事故や盗難が補償の基本です。明記物件に記載していても、持ち出していたり、人に貸していた場合の損害は補償対象外となることも覚えておきましょう。
まとめ
家財の保険は、ご自身の自己財産を補償するだけでなく、家主さんへの損害賠償も補償できる損害保険です。
賃貸契約時には、家財保険の加入を求められますが、こういった理由を知っていると納得できるのではないでしょうか。
とはいえ、必要のない高額な火災保険への加入を勧めてくる場合もありますので、家財保険の知識を持っておくことは大切です。本記事を参考に、適切な家財保険に加入してくださいね。